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乗客が少ないときにまとまって前のほうとか後ろのほうに乗られると困るので、座る位置を制限したりする必要が出てくる。
さらに、胴体がある限界を超えて長くなりすぎると、離陸の引き起こしのときに機体の後部が滑走路にすれる恐れがでてくるので、脚を長くする変更が必要になってくるし、その分重くなってしまう。
さらに、離陸した後、脚は主翼に収納するため、あまり長くなるとその分、主翼内の燃料タンクの容量が制限されて航続距離が短くなる恐れがでてくる。
ならばと、主翼を大きくすると変更がより大きくなるし、機体重量が増すと燃料を減らすことになって航続距離も落ちることになるが、減らさなければ性能が低下することになる。
一方、列を多くして胴体を太くすると広々として乗客に快適性を提供できるが、飛行機の性能や効率性が悪くなって経済性が落ちることになる。
このほか、設計画での大きな要素として、主翼を胴体の上にもってくる高翼にするか、それとも下にもってくる低翼にするか。
エンジンを胴体後部の尾翼近くにもってくるか、それとも主翼の下にするかなど、それぞれ一長一短がある。
これらをどう選択するかだが、どちらにしてもファミリー化はどこかにしわ寄せが生じる。
航空機の設計はすべての要素において、あちらが立てばこちらが立たずの相反する関係にある。
このため、技術進歩や経済性を念頭に置きつつ、今後の市場の要求を脱みながら、どのあたりでどう折り合いを付り、なにをもつとも重視して、どのような特徴をもつた飛行機を作り上げるかが重要である。
三菱重工の関係者によると、三菱名古屋にはすでに開発する小型機の客室の実大模型ができ上がっていて、国内外の主要エアラインの関係者に披露している。
客席の配置は三〇席クラスでは標準的な通路を挟んで二席と一席とになっており、移動空間を確保するために通路は客席床面より一段低くなっている。
エアラインからさまざまなアイディアの提案や意見、要望を出してもらい、それを吸い上げて概念設計に反映していこうというものだ。
国産小型ジェット機の完成予想図(提供/NED〇)失敗したら会社の屋台骨が折れる一機種だけの設計で、もつとも効率の良いところを狙って設計すればいい機体ができるが、それではファミリー化するときに無理が生じる。
果たして三菱重工は、いかなる考え方のファミリー化を選択するのか。
特徴をもたせる意味で、もつともノウハウが問われるところだ。
ファミリー化は少なくとも十年をかげて進められるが、この間、すべてが順調にいけばいうことはないが、受注が思うように得られなかったり、トラブルが発生して評判が落ち売れなくなったり、それこそテロや戦争、経済不況などから世界全体の旅客輸送が低迷すれば、これまた売れない期間が長引いて業績不振に陥る。
資金の回転や調達もスムーズにいかなくなって経営の首を絞めることになる。
もちろん、生産性が高くて採算的にあう低コストの機体を生産しなければならず、最初からたくさん売れるとは思えないだけに、月産機数が少なければそれだけ割高になる。
人件費の高さも含めて、数々のハンディを背負う新規参入の日本のメーカーが、寡占化の進んだこの市場において、大量生産で生産効率の高いボンパルディアやエンプラエルの二強を向こうに回しての競争に耐えられるであろうか。
撤退あるいは倒産した、主にヨーロッパの小型機メーカーの例からして、途中で息を抜けばそこですべて終わりであり、その結果は巨額の赤字が残るだけである。
一度新型機の開発を手がけてこの世界に足を突っ込むと、抜けたくても抜けられなくなる。
仮に撤退しても、それまでに販売した機体が世界の空を飛びつづけている限り、部品補給や改修などは延々と続けていかなければならない。
こうなると、当然のことに経営トップの責任が問われることになる。
それだけでなく、最初に開発した機体を売るときも、エアラインとしては路線によって次にその上のクラスの機体もそろえる場合が多い。
その場合、コックピットなどが共通していて、パイロットの新たな訓練が必要なく、勤務体系からも両方の操縦を自由に入れ替わることができるようにしたいため、やはり、ファミリー化を前提として最初の一機を購入するのである。
まさしく丹羽が開き直るような言い方で思わず反論したように「一回失敗したら何千億円の赤字なんですよ。
会社の屋台骨がゆらぐことになりかねない。
我々につぶれろというんですか。
国が資金を五〇〇〇億門出して、二十年サポートしてくれるならやってもいいですよ」と言いたくなるのも理解できなくはないずれにしても、新規参入の場合、リスクが大きいだけに、確定受注のローンチ・カスタマーが必要になる。
そのためには、国内のエアラインはもちろんのこと、多少なりとも可能性があるならば「ネットワーク幻」で東京都の力も借りなければならない。
もつとも可能性が高いのは、国が指導できる防衛庁の輸送機や海上保安庁など、官公庁の需要や、圏内エアラインの需要をきめ細かく掘り起こすことであるが、その数はわずかであろう。
さらには、フランスやドイツなどが盛んに行っている大統領や首相が自らセールスマンを買って出て、外交的、経済的取引をからめて外国に売り込むトップセールスも必要であろう。
これらをかき集めたとき、前沢常務がいう「五0ー一〇〇機の受注」が可能となるのかである。
相当厳しい数字であることは確かだ。
三〇席がほんとうに売れるのか日本および太洋州で、ボンパルディア機やボーイング機の販売を手がけてきた日商岩井宇宙航空カンパニー民間航空事業部の菓林顕課長は、日本が開発する一ニ〇席について疑問を呈している。
「確かにいいものは作れるかもしれないでしょうが、三〇席が売れるんですかね。
五〇席とか七〇席ならばわかりますが、どうやって売るんですかね。
ボーイングやボンパルディアと連携して売るんですか。
現実問題として、そう甘くないし、難しいでしょう。
日本国内の路線は飛行時聞が短いですから、むしろターボプロップ機だってかまわないはずで、事実、YSHの後継機として、ボンパルディアのターボプロップDHC8ーQ400(七〇席)が日本に何機も入ってますからね」エンプラエル機を長く売ってきた兼松航空宇宙部の大島裕部長(民間航空担当)も、栗林と同じような疑問を口にしつつ首を傾げている。
「日本が作れば、かゆいところに手が届くようなすばらしいものが作れるでしょう。
でも一体誰が売るんですかね。
大丈夫ですかね。
四00ー五〇〇機作らないといかんでしょうから、どんどん作って、セールスのほうはどうするんでしょう。
三〇席のマーケットが今後でてくるとはとても思えない。
ドルニエがつぶれたことをもつと考えないと。
三〇席が行き渡っていて、入る余地がなかったのでドルニエがダメだったのだから。
世界中で受け入れられなかったらアウトですからね。
たとえ売れたとしても、せいぜい日本国内で一〇機から一五機でしょう。
なにしろ飛ぶ路線がないんだから。
少なくとも一・五時間以上飛ばないとジェット機のメリットはないですから。
飛ばすと思っていた全日空がダメになった。
計画してみたら、採算が取れないとなってやめたのでしょう。
赤字で機種を減らし、人数を減らしているのが現状のところで、パイロットを増やして人数を増やしてまでやろうとは思わない。

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